通常のPIVは、均一なグリッド状の格子を張り、その格子点における速度を算出します。これは、計算流体力学的なアプローチに酷似しており、双方の比較を容易にします。
ところで、「移動先を推定する」ための計算原理は、「粒子の分布が似ているところを算出する」ことであり、その計算を行う位置、つまり、速度を算出する “場所” に制約があるものではありません。PIVのように計算点が格子状に並んでいる必要性はどこにもないのです。であるならば当然、自分好みの “場所” にその計算点を配置できるようになっていることが求められます。そんな機能がFtrPIVには実装されています。画像上に自由に計算点を配置することができます。
PIVと同様の画像処理の世界には、PTV、PIAの2大分野がありますが、FtrPIVにはそれらが統合され、粒子像一つひとつを計算点として移動先を計算することができるようになっています。もちろん、先に述べたように、そこに明確な粒子像が存在していなくても、計算点を配置することも可能です。
計算点を自由に配置できることは、ノズル先端部や壁面近傍における流速を、適切な位置で計算できるという大きなメリットがあります。
微小時間を隔てて得られた画像内の粒子像一つひとつを認識し、画像間の同一粒子を認識することで、移動量を決定します。
そのために、PTVでは、まず粒子像の一つひとつを認識する「粒子抽出」という作業が行われます。この点がPIVとは大きく異なる点です。
画像内の粒子を正確に認識(抽出)するためには、上の絵のように、粒子像が背景と完全に分離できなければなりません。もしPIVと同じ流れ場で同じトレーサ粒子を使うなら、撮影するレンズの画角はPIVと比べてかなり小さく(強拡大)しなければなりません。顕微鏡による「マイクロ流れ計測」は、その良い応用例といえるでしょう。
照明はPIVと同じレーザシート光が用いられることが多いですが、別の応用例として、液面に浮遊するマーカをトラッキングするような場合にも、PTVが用いられることがあります。このような場合は自然照明が使用されることになります。“ものを追う” という非常に基本的な機能なので、応用例は広く存在します。
粒子像が十分な大きさで、その輪郭まで鮮明に見える程度の強拡大撮影を行います。主に飛沫する粒子像の一つひとつを認識し、粒子の形状に関する詳細な情報(特徴量)を得ます。
さらに、同じ撮影で、微小時間を隔てた画像が用意できれば PTV解析 も可能で、当該粒子の形状情報と、その移動速度の関係を分析することも可能になります。
下の図は、FtrPIVでの解析画面のキャプチャです。1つの特徴量に関するヒストグラム(左)、2つの特徴量に関する相関図(右)を示しています。
相関分析では「回帰分析」も自動的に行われます。
PTVやPIAではじめに行われる「粒子抽出」により特定される “粒子の位置(重心)” は、「移動先推定」を行うための “計算点” として機能します。
移動先の推定は『 “計算点” を中心とした「検査窓」内の輝度分布に酷似した場所を探すこと』です。つまり「移動先推定」において、当該の「検査窓」の中に “粒子像” が含まれているかどうかは本質的な問題ではないのです。もし “粒子像” が含まれていれば、それに酷似した場所が推定され、含まれていなくても、その場の輝度分布に酷似した場所が推定されます。
したがって、冒頭に述べた「自由な計算点を配置して移動先を推定する」という要求は、一つひとつの粒子像の移動先を推定することと、画像処理的には同じことなのです。
このように考えると、PIVで移動先を推定するため方法(DCC法やオプティカルフロー法)は、PTVやPIAにもそのまま利用できることが分かります。
FtrPIVでは、「移動先推定」の計算は、PIVもPTVもPIAも、共通して利用できるように設計されています。また、特に古典的なPTVアルゴリズムとして有名な Baek & Lee法 も実装されています。
もちろん、“計算点” つまり『粒子像を自動抽出する機能』も実装されており、それらの特徴量は抽出と同時に自動計算されます。